村田淳一 × 備前島拓人 対談

対談メンバー紹介


<共創クリエイター>

映像プロデューサー/株式会社 AOI Pro.(執行役員)

村田 淳一

村田淳一 映像プロデューサー

1967年TOKYO生まれ。

立教大学→AOI Pro.

【代表作】
KDDI(au三太郎、UQueen)、アサヒビール、三井のリハウス、フジフィルム、ポケトーク、END ALS、QD Laser他。
CMを中心とした映像のプロデュースほか、長野県乗鞍岳の山小屋再生、松本市で行われるイベント(ALPS OUTDOOR SUMMIT)主催。

GINZA CREATIVOオーナー

備前島 拓人

埼玉県浦和出身。

博報堂を経て、2023年8月より株式会社新東通信に入社。

共創コミュニケーション事業推進を図る。

株式会社新東通信 東京本社 統合戦略室 室長 兼 統合コミニュケーションビジネス本部 本部長。

はじめに


備前島:今日はよろしくお願いします。
GINZA CREATIVOオーナーの備前島拓人と申します。

村田さん:今日はよろしくお願いします。

備前島:GINZA CREATIVOは銀座の歴史・伝統を再解釈再発見して新しい価値を創造、未来へ継承するサステナブルクリエイティブを銀座でチャレンジするために発足しました。

サステナブルというのは持続するということですが、銀座というのは私たちが生まれる前からクリエイティブの起点としての存在し、昭和、平成、令和、時代が変わってもクリエイティブがはじまる舞台となっております。私たちは、その銀座の価値を銀座品質と定義していて、未来へ継承したいと考えております。

銀座の映像ついて①


備前島:今回は、共創クリエイターとして参画いただいた映像プロデューサーの村田淳一さんと映像対談です。

銀座のことを考えて思い浮かぶ映像はいろいろあります。この対談のスタートとして私が目に留まった、または気になった動画の話をさせていただきます。

私が最近の銀座の映像として思い浮かぶのは、GINZA SIXができた時に、GINZA SIXのスペシャルムービーとして制作された動画です。「メインストリート篇」という動画で、椎名林檎さんとトータス松本さんがデュエットをしながら出演されているものです。その映像がとても好きですね。その映像は、古き銀座と今の銀座がミックスされていて、椎名林檎さんとトータス松本さんのデュエットがとても印象に残ります。その全体の演出が僕はとても好きです。村田さんは、あのGINZA SIXの映像はどう思いますか?

村田さん:あの映像は、とてもよくできていたと思います。話を聞いてもとても大変そうでした(笑)

備前島:銀座の周辺みゆき通りや、晴海通りで働く方達のイメージをすごく贅沢に演出されていました。映像がフィルムのように見えました。特にすごくいいなと思ったのは夜のシーンです。銀座の夜といえば、やっぱりネオンですね。きらびやかで華やかなシーンを3分間で映像としてやりきっている。二人が銀座を楽しそうに闊歩して歩いている。その中で百貨店の方なども登場しながら演出されています。私がすごく印象に残っているのは、タクシーの運転手が登場するシーンです。時代の移り変わりを見ているタクシーの運転手にフォーカスする数秒があり、それがとてもいいシーンだなと思います。

村田さん:あの映像は本当によく撮れています。銀座のいいところが本当に全部出ていますね。
道路に映っている水のシーンは、水を撒いて準備していると思います。

備前島:贅沢ですよね。

村田さん:動画を見ながら感心したのは、この映像に出てくるさまざまな場所を見た時に、みんながあの辺だなとわかるように撮影されているのもすごい所ですね。場所の選定なども昔からある場所や、最新の場所、みんなの記憶にある場所をかなり選んで選定しているように感じました。 いや、本当によく撮ったなと思います。あと、人がいない時にどうやって撮ったのかな?とも思いました。

備前島:確かにそれも気になりますね。GINZA CREATIVOというクリエイティブブティックからすると、この動画のように銀座の良さを感じるものはどんどんブティック内でも共有して、改めていいものを作りたいなと思わせる動画です。

銀座の映像ついて②


備前島:ちょっと話が飛んでしまいますが、私はこう見えて昔から植木等さんが大好きなのですが、一緒の時代を過ごしたわけではないのですが、私は会社に入って運よく植木さんと仕事したことがあります。

村田さん:えええええ!!!

備前島:往年の植木さんとお仕事をご一緒したことがあり直接会ったことがあって、楽しい昔話を結構長い時間させて頂きました。私は植木等さんの「ニッポン無責任時代」で出てくるシーンというのは、丸の内で勤めて1年の青年が、成り上がりどんどんどんどん偉くなって調子よく生きていく。その中で必ず上長、上司の方と一緒に夜の席を無理やり一緒にするシーンが出てくるのですが、それが夜の銀座のクラブのイメージです。

村田さん:確かに、そうですね。

備前島:植木さんが大好きだからそういうシーンの映像はすごく印象に残っていて、昔の昭和時代の銀座・有楽町が私の銀座の映像にはあります。

銀座の映像ついて


備前島:村田さんの中で銀座の映像や映像美について思っていること、また映像として残したいということがあれば、ぜひ教えてください。

村田さん:私は先ほどGINZA SIXの動画を見ながら、「あの撮り方」の「あの夜の感じ」ってどこかで見たことあるなと思い、思い出していました。私が思ったのはサントリーオールドのCMで親子編の話があり、お父さんが娘に会いに来るシーンで出る最後のタクシーのシーンが銀座の街角で、GINZA SIXの動画は、あの動画に近い印象が私には強く残っています。サントリーオールドのCMは、銀座の広告、コマーシャルでは記憶に残っています。あれもよくできていたと思います。 私にとって銀座はすごく特別な場所で、小学生ぐらい話ですが親父が「ここぞ」という時に家族を連れて銀座へご飯を食べに行っていました。

備前島:そんな思い出があるんですね。

村田さん:銀座から食事をするために築地の方に晴海通りを歩いていくので、歌舞伎座の前を通った時のことが今でも記憶に残っています。

備前島:村田さんもご家族の話をして頂いたのですが、私の父にまつわる銀座の話をお話しします。
私の父はテレビ局勤務でした。僕がまだ小さかった頃によく覚えているのが、松本清張さんの「黒皮の手帳」というサスペンスドラマをドラマ化したのが私の父で、山本陽子さんと田村正和さんの時の「黒皮の手帳」でドラマプロデューサーをしていました。家に帰ると必ず参考ロケ写真などが机にあって、そこでよく見たのが銀座のクラブ写真です。「黒皮の手帳」というのは、もともと銀行員だった山本陽子さんが、お金を持ってクラブのママになっていくストーリーで流石にクラブに連れていかれたりはしませんでしたが、当時は子供ながらに銀座のクラブは、こういう大人の社交場なんだということは具体的に刷り込まれましたね。

村田さん:それは刷り込まれますね。

銀座の映像ついて


備前島:ちょっと話を映像の方に戻します。デジタル技術が進化し、いろんなテクニカルな部分の技術も進化しています。広告を制作し発信する立場としては、いろんな技術を使いながらもその映像美というものはいいものを残して行きたいと考えると思います。
村田さんは、世界的や国内でもそうですけど最近気になっている映像美や映像技術などで、私はこういうところにフォーカスしているというような話はありますか?

村田さん:撮り方は日々進化していくと思いますが、撮り方自体が前面に出ているものというのは、驚きはするのですが人の心を動かさないなと思っています。

備前島:なるほど。

村田さん:だから、それを使って「何を撮るか」というテーマの設定の仕方が結構大事だと思います。
正直言うと、これは本当に恥ずかしいから書かないでほしいくらいの話ですが、うちの会社は是枝さんとずっと仕事していて是枝さんの「怪物」も弊社で撮っているのですが、私は「怪物」を見ていませんでした。これはまずいなと思っていました。今回たまたまカンヌへ行く飛行機の中で「怪物」を見るチャンスがあってみました。
想像していた以上にとても良かったです。途中のシーンですごくいいシーンがあって、泣けるとかそういうことではないのですが、全部観終わってエンドロールが始まる前に泣けてくる感じです。あの経験は自分の中で初めてだったので、すごく面白いなと思いました。

備前島:是枝さんの作品は、今の言葉を借りると人の心を動かすのがうまい方だなというのが前提としてありますし、やっぱり俳優さんの使い方が非常に上手いなと思います。

村田さん:是枝さんは、テレビマンユニオンでドキュメンタリーを撮られていたところから始まっているので、人の見方や人の捉え方がファンタジーの方向からではなく、リアルな人の存在から全部入っているのでそこに引き込む力があるのだと思います。

デジタル映像ついて


備前島:GINZA CREATIVOでは、最近の戦略のひとつとしてYOUTUBE、ショートフィルムなどをクライアントの要望を受けて提案することがあります。 具体的にはYOUTUBEで銀座の街を発信していこうという取り組みもありますし、弊社のグループ会社ではTIKTOKやショートフィルムなども頻繁に提案しています。同じグループ会社でZ世代を主体としたVAZという会社があるのですが、120秒や180秒ぐらいのショートドラマ(1話)が、今当たっています。他の動画制作会社は、ごっこクラブや、ナッツフィルム、そういったところがテレビでも取り上げられ、逆に日本テレビや各キー局がそこと組んでショートドラマ制作を行うことが起っています。村田さんは、そのような話はご存知ですか?

村田さん:縦型の1分ぐらいのドラマがすごく流行っているというのは聞いたことがあり、弊社を辞めて独立した人間の会社が制作した、そのようなショートドラマ動画を見たりはしています。

備前島:若い世代の生活者は我々の世代と違って、デジタルネイティブで、生まれてすぐからパソコンがある世代ですから、取り込める情報量が多い。それはどういうことかというと、入ってくる情報量が非常に多く、テレビ画面の中でワイプも入ってくるし、テロップもたくさん出してある。情報の処理能力が長けている世代である。今は2時間の映画が全部見切れない若者がいて、動く動作を簡単にして情報を素早く入手する、タイムマネジメントをうまく行なっている世代です。3分動画の中でこういう起承転結が出来ているドラマというのが流行っているという事実があって、その中でも映像美や、映像のストーリー性を追求される時代になっています。情報をわかりやすく伝えるコスパのいい動画について、村田さんはどう思われますか?

村田さん:その話を別の方と話した時に、やっぱり最初の15秒、30秒で掴まないと誰も見てくれなくなるという話になりました。今の手法や見せ方が大分変わってきています。
本当にYOUTUBE広告でもほとんどがスピードがすごく早くなっているので、なかなかついていきにくい時代ではあります。

備前島:やはりデジタルやスピードは避けては通れませんね。テクニカルな技術を駆使しながらいい作品を作っていくというのはやっぱり命題ですよね。

村田さん:そうですね。やっぱりインタラクティブがもっと進んでくると思います。今現在も開発進行中だと思いますが、AIの計算スピードが本当に上がっていますね。この秋には、編集機に普通にAIが入ってくると聞いています。

備前島:なるほど。

村田さん:これはAdobeの方もいっていましたが、Adobe PremiereにAIが搭載されて、映像の足りない部分はAIが補ってくれます。例えばリアルタイムに、「この水の量を満タンにしてください」と指示を出すと水の量が満タンにできるようになります。何をテーマに撮っていくかということが、より大事になるのかなと思います。

これからについて


備前島:私、村田さんとひとつチャレンジしたいことがあります。銀座の街をインタラクティブを使って映像として残したいという思いがあります。

例えば晴海通りやみゆき通りにスマホやデジタルデバイスをかざすと、昭和や明治の時代の映像をその場ですぐに見れる仕組みを一緒に取り組んでみたいと思っています。 

また、これは銀座に限らない話ですが、歴史ある人や、有名な社長、代々家業を継いでいる人、いわゆる先代の方達のいい意味での説教や、説法を残せないかと考えています。変な話に聞こえると思いますが、こういうものこそ、インタラクティブに残したいと思います。それは自分で話していて思い当たるところがあって、スターウォーズの映画でR2D2がレイザーの映像で小さなレイア姫が映し出されるシーンがあります。時計の文字盤の上に小さく立体的な人物が写しだされるような映像です。説教や説法も時を超えて、歴史を超えて見ることができるようにしたいです。このようにインタラクティブなものや銀座のコンテンツを残していくことをご一緒したいなと思っています。

村田さん:いいですね。銀座の街は昔から細かくは変わっていると思いますが、通りの構造は大きくは変わらず、時間や歴史がすごく積み重なっています。映像を表現する上で時間の経過を重ねて表現するのが割とやりやすい街だなと思います。

それともうひとつ、デジタルデバイスを使う方法があると思いますが、他にも最近窓に張れるようなLEDができています。そういうテクノロジーを使って、小さなバスの窓の全部にLEDを貼って、バスが移動するコース上でそれぞれのポイントでデジタル感知し、バスの社内から外を見ると昔の街並みが窓の外全体に見えるようにすることも可能かなと思います。そのようなことを考えると、歴史がある銀座は、インタラクティブやテクノロジーを生かすことができると街だと思います。

備前島:インタラクティブの仕組みをしっかり整備すればするほど、今の銀座は日本の銀座から世界の銀座になっていきますね。最近は、銀座の街を歩いているとインバウンドの外国の方が多いです。やぱり日本の規則正しい生活、美味しい食、おもてなしの文化が好まれていて、銀座にもたくさんの方が来られていること考えると、そのような映像インタラクティブの整備、銀座にとってのいい意味での技術進歩を我々が提供し、銀座がパリやニューヨークと同等になるように我々の映像がやるべきことなのかなと思います。

村田さん:そうですね。今回GINZA CREATIVOに参画させて頂くことで、映像やインタラクティブで銀座にとって素敵なことができるといいですね。

備前島:これからよろしくお願いいたします。本日は映像対談ありがとうございました。

村田さん:こちらこそ、ありがとうございました。

まとめ

今回は、共創クリエイターの村田淳一さんとGINZA CREATIVOオーナーの備前島の思いが語られました。それぞれの経験、価値観を通して銀座・銀座の映像を考える場をもうけさせていただきました。銀座について何ができるかを真摯に話し合い続けて、目的を達成するためには多くの壁があると思いますが、ひとつひとつを丁寧に考えることで、銀座に寄り添えるGINZA CREATIVOでありたいと思います。次回のGINZA CREATIVO対談をお楽しみに!