フィジカルAIが書き換える「旅のカスタマージャーニー」

東急不動産様でCES 2026 セミナー開催。

東急不動産ウェルネス事業ユニットの社内部会でGINZA CREATIVE共創パートナーの朝岡先生によるCES2026セミナーを開催しました。

右より、
ウェルネス事業ユニット ホテル事業本部 ホテル事業部 齋田賢一統括部長
GINZA CREATIVO共創パートナー 朝岡先生
ウェルネス事業ユニット リゾート事業本部 ハーヴェスト事業部 森川古都様

2026年のトレンドは、『AI Everywhere for Everyone』
– デジタル知能が『身体性』を持ち、物理世界へ溶け出す時代。

セミナー講師 朝岡
CES2026はエヌビディアのジェンスン・ファンCEOが推進する「フィジカルAI」にスポットライトが当たり、AIがソフトウェアの世界だけでなく、物理的な目を持ち、現実世界(フィジカル空間)で「行動する主体」になることが強く印象づけられました。

AIの急速な進化によって、企業のビジネスだけでなく、従業員の働き方や人々のライフスタイルも大きく変わります。

お客さま主語で見た場合、旅やホテル事業においても、革新的で重要な3つの変化が予想されます。

① 自宅からリゾートホテルまでの移動体験の変化:空飛ぶクルマと自動運転によって「ストレスフリーな移動体験」概念が根本から変わります。上級会員向けスマホアプリの中のAIエージェントが渋滞を予測し、お客さまに代わってJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)のような「空飛ぶクルマ(eVTOL)」を自動で予約。自宅から空港、そして旅の目的地であるリゾートホテルまでの移動がスピーディ&シームレスに実現します。これは単なる移動手段の提供ではなく、移動中の「感動体験」をAIがプロデュースする時代の到来を意味しています。

② リゾートホテルのお部屋での体験の変化:LGが提唱する「愛着のあるAIエージェント」のような形でAIエージェントが部屋に設置されていて、チェックインされたお客さまが誰なのかを認識します。AIエージェントはそのお客さまの好みや習慣を熟知しているので、カーテンの開閉から照明や空調設定までの操作を先回りして実行。部屋のベッドにもAIが導入されて、お客さまが入眠しやすい角度の調整や、いびきを防止するための枕の高さやマットの調整を自動で行います。また洗面所のミラーもスマートミラーになり、センサーが感知したお客さまのバイタル(生体)データをAIが分析して、健康状態を教えてくれるようになるでしょう。

③お客さまの目に触れない部分での変化: スウェーデン・ヘキサゴンの「AEON(イオン)」のようなタイプの人型ロボットが、掃除やベッドメイク、資材の運搬などバックヤード業務や労働力不足を補いことで、人間(リゾートホテルの従業員)はより「きめの細かい、丁寧な」おもてなしに集中できるようになります。レストランのキッチンではボッシュの「Cook AI」のような最先端技術が導入され、AIが食材の写真から最適な加熱時間やプロレベルの焼き加減を判断して調理、お客さまに提供することが可能になるでしょう。また、これはAIではないですが、リゾートホテルを支える電力インフラという点でパナソニックや積水化学が開発を進めているペロブスカイト太陽光電池が採用される機会が増えるでしょう。ペロブスカイト太陽光電池は伸縮性があるだけでなく、インクジェット塗布法という独自の技術を採用することでデザイン性も高いので、リゾートホテルの壁面やカラス面を利用してサステナブルな発電を行うことも可能になるでしょう。

④旅の思い出を振り返る体験の変化:レノボ傘下のモトローラが開発したAIコンパニオン・プロジェクトマクスウェル(Project Maxwell)はユーザーの視界に入る景色や耳に届く音声をリアルタイムで記録してくれるアクセサリー型のデバイスです。旅の映える景色や思い出に残るシーンの写真や動画を撮ったり、それらをSNSに投稿したりする行動は今後はAIエージェントが自動でやってくれるようになるでしょう。

テスラの自動運転技術や人型ロボット「Optimus(オプティマス)」の開発を進めるイーロン・マスク氏によれば、汎用人工知能(AGI)が2026年までに完成し、2027年以降はAIが自らの知性を進化させ、人間の知能を凌駕する「ASI(人工超知能)」の段階へと足を踏み入れ始めると投稿しました。「シンギュラリティ(技術的特異点)」実現の時期の予測はさておき、CES2026を俯瞰すると、完全自動運転、人型ロボット、工場の自動化オペレーションといった「今までバラバラに見えていた市場」がエヌビディアのジェンスン・ファン氏が提唱する「フィジカルAI」という一つの巨大な市場に統合されていくことは確実です。しかし一方でAIが提供する知性はすぐにコモディティ化し、AIだけに頼り切った企業のサービスは同質化して競争力を失います。AIをどう使いこなし、余った時間でいかに人間特有の「感性」や「温もり」を提供できるかが、これからのAI時代の企業の勝ち筋となります。

AI時代における「人間の価値」とは?を考えさせられた。

東急不動産 齋田さま
テクノロジーが進化し、知的サービスがコモディティ化するほど、逆に「生身の人間の温もり」や「洗練されたおもてなし」の価値がプレミアム化するのではないでしょうか。

  • 人間とAIの戦略的な役割分担: ルーティーン(定型)ワークで効率化できる部分はAIに任せ、人間はよりクリエイティブな活動や、心に響くサービスへの注力をすることでリゾートホテル事業の差別性を打ち出せる。
  • 価値提供(バリュープロポジション)の再定義: 企業は、AIの導入で余った時間や労力を有効に活用してイノベーションの創出や従業員の自己啓発を支援し、AIには代替できない独自のバリュープロポジション(価値提案)を突きつめて行く必要がある。

AIが速いスピードで企業のビジネスや人々の暮らしに実装されていく時代だからこそ求められる「人間力」。今回のCES2026セミナーで最も印象的だったのは、「デジタル技術が進めば進むほど、生身(リアル)の人間ならではの価値が際立つ」という逆説的な結論です。AIが効率化を極めるだけでなく、知性を自ら進化させる先で私たち人間に求められるのは、AIには代替できない「クリエイティビティ」「セレンディピティ」「手触り感」「心の機微」。テクノロジーを賢く実装しつつ、いかにウェルビーイングなお客さま体験を設計できるか。それが2026年以降のAI時代のビジネスの核心となるのではないでしょうか。