渡辺 潤平 × 岸仲 真 対談

1:対談メンバー紹介


<共創クリエイター>

コピーライター/クリエイティブディレクター

渡辺 潤平

1977年1月12日生 千葉県船橋市出身。早稲田大学教育学部卒業。

2000年博報堂入社。2006年博報堂退社。

同年6月よりground LLCへ参加。2007年株式会社 渡辺潤平社設立。現在に至る。

株式会社 渡辺潤平社:https://www.watanabejunpei.jp/

GINZA CREATIVOエグゼクティブクリエイティブディレクター

岸仲 真

1966年3月21日生 大阪府出身。早稲田大学第一文学部卒業。

ブランド開発からブランド戦略、ブランドプロモーションまでコミュニケーションをトータルにプロデュース。

2007年株式会社新東通信入社。銀座の街おこし、地域SDGsブランド開発、移住促進など

地域創生、シティプロジェクトに数多く関わる。

一般社団法人 メイシス地域創生研究会プロジェクトメンバー。

2: はじめにGINZA CREATIVOについて


岸仲:GINZA CREATIVOのエグゼクティブクリエイティブディレクターの岸仲真です。

GINZA CREATIVOというのは、銀座の歴史・伝統を再発見・再解釈し、新しい価値を創造し、未来を継承する、サステナブルクリエイティブを銀座でチャレンジするために発足しました。

私たちは、その価値を銀座品質と定義していて、未来へ継承したいと考えております。

価値、意義に共感いただき、GINZA CREATIVOに共創クリエイターとして参画いただきました、コピーライター・クリエイティブディレクターの渡辺潤平さんと、 本日お話ししたいと思います。よろしくお願いします。

渡辺さん:よろしくお願いします。

3: 銀座について


岸仲:銀座は、大手デベロッパーが開発した街ではなくて個店の集まりだと私は感じています。
昔からのお店があり、新しい店舗もたくさんできていて、それが時にはハレーションを起こしながら、急に全部が新しくなるのではなく、古いものと新しいものが混ざりあっているような街かなと思っています。

過去と未来の共創というのが重要な課題になっているように思います。

渡辺さん:近年でいうと、やはりインバウンドが盛んなエリアなので、日本の方よりは外国の方の街という印象が正直強くて、食事をしようと思っても、どこへ行っても混んでいるなみたいな、インバウンドの象徴的な街の印象を持っていますね。

以前は憧れの街というか、たとえばジャケットを買いに行きたいなとか、革靴を買いにいきたいなとか、いいものを自分で選びたい時には、まず銀座に行くみたいな場所ではありました。

岸仲:渡辺さんのように昔ながらの銀座の良さを求めてきた人が、少しインバウンドの勢いに押されていますね。

渡辺さん:どこにでもあるお店が銀座にも増えてきたじゃないですか。

昔の粒違いの店が並んでいる良さみたいなのが、だいぶなくなっちゃったなという印象を持っているから、また銀座の街が銀座らしさを回復するみたいな、そういう空気になっていくといいなと感じます。

岸仲:GINZA CREATIVOは、銀座らしさを回復するために、銀座品質という価値をクリエイティブしていけたらいいなと思います。銀座のことを考えていると、いろいろなことがわかってきます。銀座という言葉自体がすごい言葉で、ちょっと調べてみたら全国に500以上の銀座という言葉があり、「銀ブラ」もそれが単に銀座をブラブラするという意味ではなく、銀座のカフェーパウリスタでブラジルコーヒーを飲むことからきたようです。

渡辺さん:そうなんですね。

岸仲:そういうネーミングの意味も、古くからの銀座の「よき姿勢」というか、銀座らしい意味づけがされているなと思います。

渡辺さん:もともと銀座の街がものづくりから成り立った街であることは、ステートメントでも書かせていただいて、そういう何かものづくりの空気みたいなことは、すごく根付いた街であると思います。

4: 銀座の広告について


渡辺さん:広告においては、ライトパブリシティが銀座のど真ん中にあって、マディソン・アベニュー(広告会社が集まるニューヨークの大通りの名)みたいな雰囲気で質の高い広告を作っていたみたいなことが一つの憧れだったりもして、銀座から生まれてくるものの凄みとか他にないものを見出すっていうことに対しては、すごく敬意と憧れを持っていました。

私の事務所も「理想は銀座」です(笑)。家賃を度外視すればですよ。こういう場所であったらまた違ったアイデアが湧いてきたりとか、そういう考えは、ありだなと思ったりしますよね。

岸仲:人って、どこにいるか、それも影響するんですね。

渡辺さん:影響するんじゃないでしょうか。今、東京と八ヶ岳で二拠点居住しており、週の前半は東京に行き、後半で八ヶ岳に戻ると、体で感じるものが違い、幅が広がる。そういう変化を自分でも自覚しているので、日常で目にする風景が変わると、アウトプットされるものも変わるという感覚があると思います。

5: GINZA CREATIVOステートメントについて


岸仲:渡辺さんが、 このステートメントに込めた思いをお聞かせ願えますか?

渡辺さん:私自身、銀座に縁があるわけではないので、声をかけていただいたことに驚きました。光栄だなと思いましたし、かなり悩んで戸惑ったのもあるんですが、私たちがかつて憧れて、ちょっと敷居の高い銀座の街から生まれてくるものに対する期待値を言葉でどうつくっていくかということはかなり気を使いました。

岸仲:私たちもステートメントを読んで、GINZA CREATIVOに対する誇りと勇気をもらえました。

渡辺さん:何かふんわり空気というか、雰囲気だけではない言葉の方がいいと思ったので、しっかりとやっていくことが明確になるような「言葉」ということは意識しました。

岸仲:そういえば、渡辺さん、銀座の若旦那みたいですね。風貌的にも。

渡辺さん:本当ですか?たまに気合いを入れて銀座のお寿司屋さんへ伺ったりすると、やはり特別な緊張感があって、金額も特別ですけれどもね(笑)。自分に負荷をかけながらいいものを味わったり、嗜んだりする喜びっていうのは連続していくと、どんどん人間として豊かになっていくかなという風に思います。

6: サステナブルデザインについて


岸仲:ところで渡辺さんは、「木挽町通り」ってご存知でしょうか? 

渡辺さん:はい。

岸仲:実は「木挽町」という町名はもうないのです。

現在は銀座か、東銀座になっています。町名として存在しないのに「木挽町」や「木挽町広場」という言葉が銀座に残っていることこそ、昔のものが今もなお残っている素晴らしい事例ではないかと思っています。

木挽町:https://x.gd/G29g5

渡辺さん:元々、大工さんの街ですよね。「木挽町」は。

岸仲:そうです。

渡辺さん:ものづくりの原点。最近『木挽町のあだ討ち』という小説を読んだのですが、「木挽町」に芝居小屋があって、そこの裏手であだ討ちをするという作品です。血の通った町人たちの息づかいみたいなことが生き生きと描かれた小説なのですが、今の木挽町界隈を想像しながら読むと面白いなと思いました。

『木挽町のあだ討ち』:https://x.gd/d7XdU

岸仲:ほんと、そうですよね。

岸仲:先ほどお話しした個店の集まる街だからこそ「顔の見える関係を築きたい」という、街としての思いもあって、防災というテーマで銀座に関わる人々をつなげる動きもあります。GINZA CREATIVOではそういうものにもトライしていきたいと思っています。

渡辺さんが考えるサステナブルについて、最近思うことはありますか?

渡辺さん:普段の業務においてサステナブルというキーワードが出てくる時には、やはり環境方向に触れていくテーマが、圧倒的に多いですね。「SDGs」と言っておけば間違いない、みたいな空気もあって、その具体があまり見えないメッセージが多いなと思う中で、文化とかそういう社会の持続可能性ということに切り込んでいくのはいいトライだと思うし、雰囲気だけで終わらないようにしていくには言葉の役割というのはすごく大きいと思いますね。

7:銀座のデジタルについて


岸仲:最近の銀座は、グローバルやインバウンドなどの話が多いですが、もう一つはやっぱりデジタルが大事になってきています。

銀座というのは意外にデジタルが遅れていて、今年の春のイベントでもぜひデジタル化をという声があり、データの蓄積などを進めていかなくてはいけないという話がありました。

渡辺さん:銀座の街そのものが立ち遅れているという風にはあまり感じていないのが正直なところです。

銀座でお店や事業をやられている方々が、じわじわ高齢化していらっしゃるのが現実だと思いますし、そこでリテラシーが追いつかないことはあると思うんですね。そこに強烈な風を吹かせることよりも足りないものを適宜補っていくものとしてのデジタルであってほしいなと思います。

岸仲:例えばこの先、デジタル化によってインバウンドの方と円滑にコミニュケーションが取れるようになるといいですね。

8:これからについて


渡辺さん:銀座の街がどうありたいのかみたいなグランドデザインが、まずあったほうがいいかなと思うんですね。

今の銀座の街を見ていると、外国人の観光客がスマホで自動翻訳しながら店員さんと四苦八苦してコミニュケーションをとっているみたいなことを見ていると大変そうだなって思ったりするんです。

どこに向かって開かれた銀座になっていくか、外国人観光客の方に目を向けた銀座にしていくのか、これまでのように少し敷居の高さのある銀座を大事にしていくのかは、方向性が結構違うなと思っています。銀座に息づいて商売をやっている人や、実際暮らしている人たちがこの街をどうしていきたいみたいなことをもうちょっとリアルに知りたいなというのはありますね。

観光地としてさらに多くの人を取り込むのか、もうちょっと間口を狭くしながら自分たちの大事にしていることをしっかりと育んでいくのか、方針はちゃんと立てたほうがいいと思います。

岸仲:これからの銀座は何をやらなければいけないか、今見えた気がします。銀座のグランドデザインは、すごく大きな課題かなという感じがしました。

渡辺さん:銀座という街を実験場にしていくことなのか、銀座という街の価値を上げていくためのものづくりをしていくのかという、プロジェクトの役割がまだ明快には見えていなくて、そこは是非、皆さんにお話を伺いたいと思います。昔ながらを変えないことと、伝統をつなぐことは同じ話のようで違う気がしていて、そこの部分をしっかりしていかないと、いろいろなものが立ち行かなくなりそうな気もしますよね。

岸仲:銀座の方にも渡辺さんを紹介しながら、GINZA CREATIVOで共創していけたらと思います。

本日は、どうもありがとうございました。

渡辺さん:はい、ありがとうございました。

岸仲:これからも、よろしくお願い致します。

まとめ:

今回は、共創クリエイターの渡辺潤平さんとGINZA CREATIVO エグゼクティブクリエイティブディレクターの岸仲の思いが語られました。それぞれの経験、価値観を通して銀座を考える場をもうけさせていただきました。銀座について何ができるかを真摯に話し合い続けて、目的を達成するためには多くの壁があると思いますが、ひとつひとつを丁寧に取り組むことで、銀座に寄り添えるGINZA CREATIVOでありたいと思います。

次回は、ゲストに、共創クリエイターでアートディレクター/クリエイティブディレクター/グラフィックデザイナーの小杉幸一さんと、GINZA CREATIVOのクリエイティブディレクターの小野彰彦の対談です。お楽しみに。